新型コロナウイルス感染症による嗅覚・味覚障害について
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会はこのほど、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により発症し長期間持続する嗅覚・味覚障害に対する診療に関する文書をホームページに掲載しました。以下にその内容をまとめました。
- 現時点で確立された治療法はない
- 鼻副鼻腔炎が存在する場合はステロイドの全身あるいは局所投与などで改善する場合もある
- 鼻副鼻腔に異常を認めない場合は当帰芍薬散や嗅覚刺激療法が有効である可能性がある
- 味覚障害患者で血清亜鉛が低値を示す場合は、亜鉛製剤投与の適応と考えられる
- 嗅覚・味覚障害に長期の治療を要すると説明し、精神面でのサポートも行うべきである
日本耳鼻咽喉科学会と金沢医科大学の研究グループによる、新型コロナウイルス感染症による嗅覚、味覚障害に関する調査結果がまとめられ、厚生労働省アドバイザリーボードから公開されました。
- 味覚障害を訴える患者の多くは風味障害である可能性が高い
- 嗅覚障害、味覚障害ともに女性に頻度が高く、加齢とともに頻度は減少した
- 嗅覚障害、味覚障害の発生は、鼻づまり、鼻水、くしゃみ、鼻の痛みと正の相関を示した
- 障害の程度としては、嗅覚障害では59%が、味覚障害では37%が全くしないと回答したが、速やかに回復する症例も認められた
- 異嗅症は20%に、異味性は39%に認められた
- 障害によるQOLへの影響は、「飲食が楽しめなくなった」など食に関することで嗅覚障害、味覚障害と強い相関を示した
- 嗅覚障害、味覚障害ありと回答した患者のうち、それぞれ60%、84%が1か月後の調査で改善を示した