老人性難聴と補聴器

老人性難聴

 年齢による聴力の変化は20歳頃から始まり、若者にしか聞こえない「モスキート音」はその頃から聞こえない人が増えます。加齢による聴力変化は高音域から始まることが特徴で、聴力は40歳を過ぎると徐々に低下します。そして70歳以降では、多くの人が聞こえにくさを自覚するようになります。

 内耳や蝸牛神経、脳の機能が低下して起きる難聴は感音性難聴であり、老人性難聴は加齢が原因の感音性難聴です。老人性難聴では、音は聞こえても言葉は聞き取りにくくなります。高齢者では脳幹から皮質までの中枢聴覚路での情報処理速度が低下しており、会話を理解しにくくなっています。

老人性難聴と補聴器

 高齢者では認知症が問題となりますが、難聴は認知症のリスクです。中年期(45歳から65歳)に難聴があると高齢期での認知症のリスクが約2倍に上昇するというデータがあります。補聴器は聴力を補うためのものですが、老人性難聴では認知症予防のために軽度難聴の段階から使うべきです。

 老人性難聴は蝸牛神経や脳の機能低下を伴うことが多く、若いときの聴力を得ることは補聴器に期待できません。言葉を聞き分ける能力である語音聴力は、残念ながら補聴器で補うことができないのです。語音聴力が著しく低下した人では、いくら高性能の補聴器を使っても言葉をはっきり聞くことができません。

 老人性難聴のために補聴器が必要であっても、十分な語音聴力が残っていなければ高価な補聴器がその性能を発揮できません。語音聴力はどの程度か、補聴器が必要なのか、効果があるのか、などは日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が認定する補聴器相談医が判定してくれます。

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認定補聴器専門店

 補聴器は普通の大きさの声での会話が聞き取りにくくなった場合に、はっきりと聞くための医療機器です。補聴器は薬機法で管理医療機器に分類されており、家電製品である集音器とは性能や満足度が異なります。しかし、日本では集音器と同様に補聴器は医師の診断がなくても購入できます。

 欧米には「オージオロジスト」という公的資格を持つ技能者が聴力検査や補聴器の調整を行いますが、日本では認定補聴器技能者が販売店に常駐する必要はないのです。欧米諸国の補聴器使用者の満足度が70~84%であるのに日本は39%しかないのは販売店の対応の問題もありそうです。

 補聴器はすぐに使えるものではなく、購入後の調整やトレーニングが必要です。最適な補聴器を購入し、アフターサービスを期待するには認定補聴器専門店で補聴器を購入してください。認定補聴器専門店での購入であれば補聴器相談医からの書類により医療費控除を受けることもできます。

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